養生

初午のしもつかれ 郷土料理と薬膳と信仰のつながり

しもつかれとは

「しもつかれ」。地域によっては「すみつかれ」とも言われています。

栃木県・茨城県の一部周辺で作られている郷土料理。

2月の最初の「午の日」に食べます。

原材料や作り方は?

基本の材料は

大根 鮭の頭 節分の大豆の残り 人参 油揚げ 酒粕

どれもスーパーに行けば容易に入手できるもの。

畑に行けば大根があるよ!って家も少なくないと思います。

我が家は夫が栽培した大根を惜しみ無く利用しました。

初午と節分は近い。

節分が終わった後、大豆は全部食べずにとっておきます。

香ばしく大豆を炒ります。

大根の下ごしらえのポイントは「鬼おろし」を使うこと。

義母が愛用していた年季の入った鬼おろしで大根の食感を残しつつ、目の粗い大根おろしを作ります。

鮭の頭は、この時期どこのスーパーでも入手できます。

ケンミンショーのネタで出てきそうな話ですね。

2尾分、税抜き206円で入手しました。

臭みを取るのに下茹で後、電気圧力鍋で圧力調理。

太骨は残りますが、軟骨はホロホロに煮溶けます。

昔はお正月の新巻鮭の頭を使っていたようです。

 

材料を鍋に投入。

グツグツと煮込みます。

適宜、めんつゆやしょう油などで味を整えます。

我が家は「酢」を少々加えることが伝統の様子。

伝統に従い、酢を投入しました。

酒粕を入れることにより、コクが出ます。

煮込んですぐよりも、1晩置いたほうが、味が落ち着きます。

そして完成!

しもつかれを知らない土地から嫁いで30年近くなります。

ようやく今年、しもつかれ作りデビューを果たしました。

我が家のしもつかれの灯が消える…

ちょっと前は義母がこの時期、張り切って腕によりをかけてしもつかれを作っていました。

結婚してはじめての初午。

ひたすら材料を鬼おろしで擦りおろす義母の姿…。

義母が大鍋でしもつかれを作っている様子を初めて見たまだ20代半ばの私は、恩返し作業中の鶴の姿を見てしまったかの如く、大きな衝撃を受けました…。

義母はよく「7軒のしもつかれを食べると中気(脳梗塞とか)ならないから」と言い、近所や仲良しの奥さんとしもつかれ交換していました。

しかし数年前、義母が高齢化に伴う心身の不調に陥って以降、我が家のしもつかれ作りの灯は消えました…。

周囲ではしもつかれをバリバリに作っていた世代の引退やコロナ禍の影響等で、他の家からのおすそ分けも無くなり、なおさらしもつかれは遠いものとなりました。

鬼嫁と言われそうですが、しもつかれは別に好みではないので、私の代でしもつかれ作りの灯は消火しようと思いました。

夫はしもつかれを作って欲しそうでしたが、強制されることは無かったので、しもつかれは絶滅危惧種同然でした。

消そうと思ったしもつかれの灯、薬膳を勉強してから考えが変わる

2021年から薬膳を学び

「その食物をその季節に食すのは、何かしら身体への必要性・効能があるという理由に基づいているから」

という考えを、曲がりなりにも持つに至りました。

しもつかれで存在感を発揮するのが「鮭の頭」

鮭は「温裏類」に属し、臓腑を温め、冷えの症状を改善する働きがあります。

立春過ぎと言えども、まだまだ寒さ厳しいこの時期。

鮭は外部の寒さから身を守り、体内の体を温める働きを補うにあたってピッタリの食材。

その他、消化を促す大根、血を養う人参、身体を温める酒粕など、寒さに負けない身体を作るのに必要な食材が勢ぞろい。

そして、更なる秘密が節分の豆。

豆→魔滅 祈りの力が入っています。

現代のように食品が豊富でなく、寒さから身を守ることもままならなかった時代は、元気で過ごすためにしもつかれに用いる食材の力を借りることが尚更必要だったのでしょう。

しもつかれに対する理解が一歩深まり、我が家のしもつかれの灯復活に結び付きました。

稲荷信仰や神社参詣を通じて

 

栃木・茨城のしもつかれ文化の周辺には「日本三大稲荷 笠間稲荷神社」

が存在します。

生命の根源を司る、農業、工業、商業、水産業のあらゆる守護神としての信仰を集めています。

昨年の秋、笠間稲荷菊祭りを見に行った際に行われていた繭や穀物の品評会は、非常に厳かなものだと感じました。

稲荷神社の豊穣を感じ、加えて様々な表情の狐さんたちも印象深く、再度ゆっくり参詣したいと思いました。

初午の日は、全国の稲荷神社で「初午祭」が執り行われます。

二月初午は、京都の伏見稲荷大社の神様が降りた日とされています。

初午とは、ただただ、二月初めの午の日とばかり思っていましたが、稲荷神社と深い関係があるとは初めて知りました。

しもつかれを稲荷神社に奉納する習慣があることも初めて知りました。

今思えば、昨年笠間稲荷神社参詣の際「来年はしもつかれを作る」というインスピレーションを受け取っていたのかもしれません。

加えて薬膳を学んだこと。

郷土料理、信仰、薬膳というカードが三枚きちんと揃ったような感覚を目の当たりにしました。

神社という存在は、いろんな物事や情報を中継して結び付ける作用があるのでは?と感じます。

節分明けての春。

今年も神社参を楽しみ、薬膳や占術の習得などトライしていきます。

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