小さな旅

山の神 山の幸に感謝 栗駒 狩人の熊そば

くりこま夜市 六日町商店街へ

8月13日お盆の入りの晩、地元の美味しい食べ物を求めたり、夏の夜の故郷の賑わいを楽しみに「くりこま夜市」に出かけました。

ちなみに6月のくりこま夜市では、独特な装束が印象的な秋田の「西馬音内盆踊り」が披露されました。これは本当に間近で見たかった。

13日は台風の接近あり、そんな中でも東北地方への接近は無い様子だったので、「夜市の時間帯はお天気持つだろう!」と予想していました。

夜市会場の六日町商店街に到着。その時点で雨が降り出しましたが、傘をさせば大丈夫なレベル。

一緒に行った弟と、まずはそれぞれ好きなところを見ようということになり、商店街を散策。

「何があるのだろうか?」と、たくさんの出店に目を惹かれ、ワクワクしながら商店街を歩いていると…無情にも激しい雨と雷がやって来ました。。。

足元に注意して歩いてもその甲斐なく、靴から靴下まで水浸しになりました。愛用のギョサンで来なかったことを激しく後悔しました。

「狩人」に辿り着く

そんな状態で商店街の端まで歩いて行くと、「熊そば」を食べることができるお店「狩人」が目に飛び込んで来たではありませんか!

弟は何度も「狩人」を訪れており、お店のこと、熊そばについて度々熱く語っていたため、いつぞやは私も訪れたいと思っていたのでした。

弟はお昼に別の店でそばを食べたばかりだと言っていましたが

「こんなチャンスは滅多にない。今、ここで熊そばを食べたいんだ!」と直訴。

結果、念願の狩人に辿り着くことができました。

いざ、店内へ

お店はご高齢ながらも現役のマタギであるご主人と、奥様が仲睦まじく切り盛りしています。

お店に一歩入ると…何でしょう、里山の雰囲気というか、日本昔話的というか、懐かしさと安らぎのようなものが伝わって来ます。

お邪魔した時は、畳の席でファミリーが食事中でした。

カウンター席に座ると、奥様が温かいお茶を出して下さってほっと一息。

見上げると狩猟の産物が飾られています。

イノシシの頭。かなりの大物。

このイノシシは狩猟当時、多分体重200㎏くらいあったのではないでしようか。

その左の奥に熊の皮が飾られています。

店内のあちこち、目に飛び込む全てが新鮮と驚きをもたらしてくれました。

熱々の熊そばを堪能

いよいよ、きあがった熊そばが運ばれて来ました。

「熱いから気を付けて下さいね」とご主人がにこやかに声をかけてくれます。

ご飯とセットです。

熱々の熊そば!

表面の脂が熱々を封じ込めてくれています。

まず、スープを頂きました。

ベースの醬油味、結構しっかりしています。

熊のエキスが溢れています。

そして主人公の熊肉…赤身で脂肪が絶妙に存在。

食べやすい厚さにスライスされており、適度な歯ごたえです。
適切な下ごしらえがなされているのでしょう、においは全く感じません。

熊肉そのものもさることながら、ご主人の調理法のおかげで素材の素晴らしさが生かされているのだと思います。

熊肉に内包された濃厚な旨味を噛みしめながら、そば、スープを頂きました。

ご飯は熊肉を乗せてスープを少しずつかけて食しました。

本能が無我夢中で貴重な自然の恵みを追い求めていたのでしょう。

いつもは猫舌の私。

その時ばかりは熱さをものともせず、滝のような汗を流しながら、ただ一心に熊そばを食しました。

厨房から奥様が「急がないでゆっくり食べて大丈夫ですよ」と優しく気遣いの声をかけてくれました。

薬膳的熊肉の効能

薬膳的には

腰足疼痛 筋骨麻痺 脚気 などに効能があるとのことです。

マタギの人が山道を躊躇なく歩くことができるのは、熊肉を食してその効能を得られているからなのかもしれないと思いました。

円熟のマタギの背中が物語る

ファミリーのお客さんも帰られ、暖簾をご主人が取り込み、店内の客人は私と弟の2人。

外の雨は止まず、夜市の終了も切り上げられる雰囲気が店内にいても分かりました。

奥様に普段は何時まで営業ですか?と伺うと

「コロナが流行ってからはだいたい5時で閉めます。その前は8時ぐらいまでやってたけど」

とのことでした。

ご主人は一見「穏やかなおじいちゃん」という雰囲気ですが…

かわいらしい熊の絵が描かれた調理着に覆われた背中は、長年の狩猟の経験や厳しい自然との対峙を寡黙に語っているかのように見えました。

山の神への感謝と畏怖の念

お店には神棚が祀られています。

山の神様、自然に対する感謝と畏怖の念を形にすると、このような形になるのだな、と大いに納得しました。

畏れ多いので目に焼き付けるに留めました。

「また来て下さいね」と奥様の笑顔に送られ、家路につきました。

山の幸の滋養を存分に吸収することができました。

もしも食の世界遺産があったら、是非とも狩人を指定してほしい…と思います。