小さな旅

偕楽園の旅 梅の不思議と陰陽の世界を感じる

梅まつり開催中の偕楽園の旅に出かけた記です。

偕楽園駅に降り立つ

偕楽園駅は梅まつりの期間限定、土日のみ営業の常磐線の臨時駅。

しかも、停車するのは下り列車のみ。

列車が停車する時間も9時台から16時台と限られています。

昔、若かりし頃、電車に乗るために時刻表を眺めていた時代…

この偕楽園駅は期間限定でしか列車が停まらないことを知りました。

「まぼろし的な」というイメージを抱き、いつか利用したいと思っていました。

今年の梅まつりの旅で、念願叶って偕楽園駅に降り立ちました。

偕楽園を訪れた際、周辺の道路は車で混雑気味でした。

梅まつり期間中、車か電車、どちらで行こうか迷っているのなら、電車利用は有効な手段かと思います。

その他の公共交通手段として、水戸駅からのバスもあります。

三千本の梅に出迎えられる

偕楽園駅を下車して、歩いてすぐのところに偕楽園があります。

園内には約100品種、3000本の梅が植えられています。

たくさんの出店の間と人混みを通り、東門から入園。

入園にはチケットが必要。

混雑の中スムーズに入園するにあたり、チケットはコンビニで事前に購入しました。

一歩園内足を踏み入れると…ここぞとばかりに咲き乱れる、幾種類もの梅の花の美しさに息を吞みました…。

まさに春爛漫の世界。

 

ジャスミンの香りを薄く、甘くしたような感じ…?

春風が梅香をふんわり鼻先に届けてくれます。

梅の不思議

菅原道真と梅

学問の神様として祀られている平安時代の貴族 菅原道真。

菅原道真が京都から九州大宰府に左遷された際の「飛び梅伝説」は有名な話。

東風(こち)ふかば 匂いおこせよ 梅の花 主(あるじ)なしとて 春ぞ忘るな

「東の風に乗せて、梅の香りを大宰府に届けておくれ」

という意味の句を菅原道真が詠むと、梅の木は一夜のうちに京都から大宰府まで飛んできたそうです。

人間と梅の思いが通じ合う、不思議な話です。

好文亭のネーミングの由来

梅の花に彩られる偕楽園の中に「好文亭」という建物があります。

偕楽園は最後の将軍「徳川慶喜」の父「徳川斉昭」が領内の皆と共に楽しむ場所にしたいという願いから作られました。

徳川斉昭は「大河ドラマ 晴天を衝け」で竹中直人が演じていましたね。

好文亭は偕楽園内に作られた余暇休養の場。

コンセプトは「良く遊べ」といったところでしょうか。

因みにその対になる「良く学べ」のコンセプトを表す場所は、水戸市内にある水戸藩の藩校だった「弘道館」です。

「好文」とは梅の異名。

好文亭とは、昔の中国 晋の武帝の「学問に親しめば梅が咲き、学問を廃すれば咲かなかった」という故事に基づき斉昭が名づけたそうです。

人間の学びと梅の花の関係性が故事において表されていたことは、とても興味深いものがあります。

究極の保存食 梅干し

偕楽園では毎年6月に「梅の実落とし」が行われ、梅の一般販売もあるとのこと。

徳川斉昭は「梅干しは保存が利き、防腐・殺菌効果もあるので、軍事の際の非常食として役立つので蓄えておくべきである」と手記に残していたそうです。

現代でも梅干しは、お弁当やおにぎりにご飯が傷まないように入れたり、お腹の調子が悪い時はお粥と一緒に食べたりと、日常生活の中で人間を助けてくれています。

昔から梅と人間には物理的にも精神的にも、深いつながりがあると感じました。

好文亭のカフェでコーヒーブレイク

(好文亭入場の際、入館料がかかります)

余暇休養の場として作られた好文亭。

創建時の建物は空襲で焼失。

現在の建物は戦後復元されたものだそうです。

この好文亭からの眺めの、何と素晴らしいこと!

居ながらにして、仙波湖周辺を一望できます。

襖絵も美しい。

休息とエネルギー補給のため、好文亭内のカフェにて一休みしました。

梅ケーキセット(ケーキ単品700円、コーヒーセット1100円)を注文。

升に入ったケーキ。

ケーキの上には春色の粉砂糖。

程よい甘さのクリームの下には、甘い梅と梅ゼリーが潜んでいました。

偕楽園の美しい景色を眺めながら頂くスイーツは格別でした。

陽の世界から陰の世界へ

梅林をひと通り散策後、偕楽園の中で気になっていたスポット「吐玉泉」目指して移動。

竹林の間の道を通り抜けます。

梅林の華やかさ、賑わいとは真逆の世界です。

日光も木漏れ日として僅かに地面に届く程度。

静寂で、凛とした空気。

ここが偕楽園の中に存在する「陰の世界」です。

我々が存在するこの世界の中で、陰と陽は変化しながらバランスを取っています。

色鮮やかに咲く梅の花を見て心躍らせる。

竹林の凛とした空気の下で心を整える。

人間にとってはどちらも大切。

偕楽園の陰陽は、人間の心身のバランスを絶妙に整えてくれると感じました。

吐玉泉

竹林を通り抜けて吐玉泉に到着。

白い大理石の井筒から澄み切った水が湧き出ています。

これが

吐玉泉(とぎょくせん)

宝石を吐き出す泉?素敵な名前です。

この水は眼病に効くといわれ、好文亭の茶の湯にも使われたそうです。

こんこんと湧き出て溢れる吐玉泉の水。

訪れる人の心も潤してくれるかのようです。

吐玉泉から湧き出る水を見て触れて…かなり気になる場所でした。

表門から退園

入園は東門から行いましたが、退園は表門を通過しました。

表門はその色から別名「黒門」とも呼ばれているとのこと。

本来であれば、ここが偕楽園の正面入り口なのだそうです。

表門から陰の世界である竹林を通って、陽の世界である梅林方面に行くコースがおすすめとのこと。

今回偕楽園散策後、行きたい場所があったため敢えて表門から退園しました。

偕楽園の歴史、園内に存在する陰と陽、梅と人間の古来からの関係性を知り、美しい景色を見ながら美味しいスイーツを堪能…この上ない旅でした。

もっと梅を愛でたい気持ちにもなりました。

今年の梅仕事はフレッシュな気持ちで取り組めそうです。

表門から向かった場所とは

表門から退園して向かった場所は、茨城県立歴史館

鹿島と香取の企画展を見学。

貴重な資料を目の当たりすることができました。

アンケートに回答、鹿島神宮・香取神宮の焼印入りの木札をいただきました。

アンケート回答で木札をいただけるのは、無くなり次第終了だそうです。